第5章 夢の行方
「…禍事・罪・穢れを祓いし、清めし、畏み畏み賜うーー」
それはおばあちゃんの不思議な呪文。
毎朝、神棚に向かっておばあちゃんはお祈りをしていた。
その間、手を合わせるおばあちゃんの膝の上にちょこんと座ってその呪文を聞くのが心地よくて好きだった。
「おばあちゃんはどうしていつもおいのりをしているの?」
「家族のみんなが幸せで居られるようにだよ」
そう言って優しく笑うおばあちゃん。
大好きでずっと一緒にいたかった。
࿐༅ ࿐༅ ࿐༅
「……おい、起きろ」
「…ん…?」
頭を小突かれて目を覚ます。
すぐに身動きが取れないことに気がついた。椅子に座らされた状態でロープで体を固定されている。
目の前には二人の若い男がいた。気を失う直前に見た老婆はいない。
「ここは…」
「そんなことはいいから、五条悟や呪術高専について知ってることを全部話せ」
「五条先生…?」
「ほら、やっぱり知ってるんじゃねぇか」
しまった、と思った。この人たちは五条先生の敵だ。じゃないとこんなことする意味がない。
あの時、きっと拐われてどこか知らない所に連れてこられたのだと直感した。
「私は何も知りません…。だから早く離して」
もう一人の男が呆れたようにため息を吐く。
「ほら、言っただろ。簡単にしゃべるわけないって。もう少ししたら婆ちゃんが帰ってくる。そしたらお前殺して体を使わせてもらうよ。婆ちゃんは降霊術が得意だからなぁ」
薄ら笑いながら得意げに話す姿にぞっとした。背中にいやな汗が流れる。
「でも名前は聞いといた方がいいか。教えてくれる?」
「教えるわけないでしょ!!」
自分を殺そうとしている相手に。利用なんてされたくない。
「へぇ?せいぜい悪あがきしなよ」
男は勝ち誇ったような顔のままそう言った。