第5章 夢の行方
廊下をばたばたと数人が走り回る音と同時に医務室のドアが壊れんばかりにバァンと開く。
先陣を切ってドアを開けたのは真希、次に乙骨、狗巻、パンダ、最後に仏頂面した伏黒の順だ。
「君たち、廊下は走っちゃいけないよ」
せっかく教師らしく注意したのに、当の生徒たちは聞いちゃいなかった。
「それどころじゃねぇんだよ!鈴が誘拐された!」
「…その突拍子もないストーリー、誰が考えたのさ?」
呆れ顔の五条に真希が急いで説明する。
すると五条は片眉を上げると顎に指を当てて、考え込んだ。
「…なるほど。恵に見放されて傷心の鈴が裏門から外に出ですぐ姿を消したと…。恵のせいで……」
一番後ろで所在なさげに立っていた伏黒に五条のイヤミったらしい言葉が突き刺さる。
「五人でくまなく探したし、玉犬でも途中から匂いが消えたみたいで辿れねぇ。鈴には土地勘ねぇし、一人で遠くに行けっこないだろ」
「誘拐はともかく、確かに事件事故を視野に入れた方がよさそうだね。じゃ、手分けをしよう。憂太とパンダは高専内の捜索。真希と棘は近所の立ち寄りそうな店を回って情報収集。恵は僕と伊知地の所に行こう」
࿐༅ ࿐༅
補助監督の伊知地は事務室でパソコンに向かっていた。目に疲れを感じてそろそろ休憩しようか、と思った矢先ドアが開いた。
「伊知地いる?前に呪詛師のアジトの地図あったじゃん。それすぐ出せる?」
「それなら、このパソコンのフォルダの中にあるのですぐに。五条さん、どうかされましたか?」
「んー、暇だからひとつずつ潰していこっかなって」
慣れなのか五条の不穏な台詞にも動じずに、伊知地はプリントアウトした用紙を数枚手渡した。
「お気をつけて」
「そっちこそ事後処理よろしくね」
サッと伊知地の顔色が悪くなる。残業を覚悟したに違いなかった。