第5章 夢の行方
「硝子、鈴知らない?」
某パティスリーの紙袋を持った五条が医務室を訪ねた時、家入は仕事中。任務で怪我をした呪術師の手当てをしていた。
「知るわけないだろ。仕事の邪魔だ、五条」
睨みつけても五条はどこ吹く風で椅子に座った。
「おかしいなー、さっきから探してんだけど。一緒にマカロン食べようと任務帰りに買ってきたのに」
「随分、彼女にご執心だな」
家入は手を洗うと、患者の状態ををカルテに記入して棚に戻した。呪霊から受けた傷はさほど重傷ではなく、後は安静にしたら治るという。
「そうかな?」
「違うか?スカウトしたと聞いたぞ」
「まあね、呪術師になるかどうかは鈴次第だけど。恵とは違って非術師の世界でもすぐ居場所が見つかりそうだからさ」
「そうだろうな」
鈴は明るくて穏やかで呪術師としては珍しいタイプだ。他人と違うことを今まで意識することもなく生きてきた。だからといって呪術師を怖がったり、崇めたりするわけでもなく、ただ現状を受け入れている。
「鈴はね、柔軟性というかしたたかさというか、切り替えが早いんだよね。恵とは正反対。あいつの中、後悔とか迷いとかしかないもん。二人で足して割ったらちょうどいいぐらいじゃない?」
もし鈴がここに残れば、4月からも同級生になる。人数が少ないからおのずと関わりが増え、お互い影響を受けることも多いだろう。
「新学期からも楽しくなりそうだよ」