第5章 夢の行方
鈴がなんとなく自分を探していることはわかっていた。偶然でも出会わないように先回りして避けていたから。
高専でも授業や任務が始まって、真希の自主トレに付き合う必要もなくなった。
学校以外の時間はフリーだ。部屋で読書が一番落ち着くが、五条がいつ面倒を押しつけにやってくるかわからない。
伏黒が選んだのは、屋外で読書だった。
「真希さん!見つけたよ、伏黒くん!」
「乙骨さん?」
高専のとある木の上。地上から10mほどの高さの太い枝に器用に寄りかかって本を読んでいた伏黒は不審そうに瞬いた。思いきり、乙骨に指をさされたから。
「よし、棘」
「ーー落ちろ」
抵抗する間もなく狗巻の呪言が効いて、体が真っ逆さま地面に落ちる。
「……っ!」
とっさに受け身を取ろうとした伏黒はもふもふの上に落ちた。いや、パンダにキャッチされたのだ。
「フォーメーションZ、成功だな」
「しゃけ!」
「……は?何やってんすか?」
地面に立った伏黒は四方から真希たちに囲まれたが意図が全く見えない。
これからボコられるのだろうか。まさかのいじめられっ子の気分だ。自分が逆の立場になるとは思ってなかった。
真希は伏黒の胸ぐらを掴む。
「てめぇ!鈴のこと何避けてんだ!?コラァ!!」
下手なチンピラより怖かった。