第5章 夢の行方
学校が始まってからは伏黒と会えなくなった。
というか、その前から事情聴取の合間に高専の中をうろうろしてもなかなか会えない。真希や乙骨、狗巻、パンダにはよく会うのに。
(相談したかったのに…、五条先生に言われたこと)
鈴は唇に触れる。
びっくりした。あんな風に男の人に触られるなんて。思い出すと今でもどきどきする。
(それにしても、私が呪術師になるなんて)
信じられない。でも自分のように呪いで誰かを喪って悲しい思いをする人を一人でも減らすことができるだろうか。
(…もしかして、また迷った?)
高専の建物は曲がり角や分かれ道がやたら多い。先に部屋があると思ったら行き止まりだったりするからすぐ迷子になる。考え事をしていたから余計だった。
そんな時は通りすがりの呪術師たちが助けてくれるのだが。
「あ、真希さん!」
見覚えのあるポニーテール姿を見つけてすぐ駆け寄る。真希だけでなく1年生が勢揃いしていた。
「鈴?こんなとこで何やってんだ?」
「えっと、迷子です!」
「は?本当とろいな、お前」
「おかか」
「僕も最初はよく迷ったよ」
「この階は特に入り組んでるからな。恵はどうした?」
「伏黒くん?最近会わないんですよねー」
もしかしたら会えるかも、と少し建物の中を探検したら迷子になってしまった。
「さっき自販機の前にいたけどな」
「ふーん、私らも探しといてやるよ」
真希は何かを企んだようにニッと口角を上げた。