第5章 夢の行方
三学期初日。久しぶりに行った学校は事件の話で持ちきりだった。
鈴の安否を案ずるだけならまだいい。
怪事件としてネットで取り上げられた情報をさも真実のように嬉々として話す者、彼女の席に触ると呪われてしまうと、もうこの世にいないかのように噂を流す者。
今度まとめてシメあげようと心に決めた。
クラスはお通夜のように空気が重く、真実を知っている伏黒には居心地が悪すぎた。
一秒でもこの空間にいたくない。さっさと帰ろうとチャイムが鳴った瞬間に鞄を背負って教室を出る。
「ねぇ、伏黒待って」
一瞬迷ったが、呼び止める声に振り返る。
涙目で立っていたのは、鈴の親友たちだった。
話があるの、と深刻な顔で言われ、断れなかった。場所を人気がない校舎裏に変え、絵里奈と帆花の話を聞く。
「あの日さ、伏黒は鈴の家に行ったんだよね?その、どうなってた?」
「…俺が行ったときにはもう警察が来てて、中に入れなかった」
「そっか。鈴がいなくなったなんて、私たち信じられなくて……。受験が終わったら3人で遊びに行こうねって話してたのに」
絵里奈はそう言うと両手で顔を覆って泣き始めた。
あの状況から鈴が犠牲になってないと考える方が難しい。
二人は冬休みの間、相当悲しんだだろう。生きていると言えればどんなにいいか。
「悪いけど、俺が知ってることは何もない」
「そうだよね…、呼び止めてごめん」
いつもけんか腰の帆花でさえ、しおらしい。
鈴の居場所はちゃんとここにあったんだ。高専にいていい人間じゃない。
そうやっと気がついた。
(もう蓮見と関わり続けるべきじゃない……)