第5章 夢の行方
伊知地の報告は続く。調べさせられたのは鈴の素性だけでなく、埼玉の事案自体の洗い出しだ。
伊知地は乾いた指で報告書をめくる。
「あと、蓮見さんの叔父の件ですが…、黒でした。呪詛師との金銭のやり取りも確認できましたし、如何しましょう?」
「ほっといてもいいんじゃない?呪詛師にはもう目ぇつけられただろうから、金がある限りむしり取られるよ。勝手に自滅するだろ」
呪詛師とはそういう連中だ。頼った時点で法外な金を要求され、それはこれからも続くだろう。自業自得だ。
「蓮見さんには?」
「僕が機を見て話すよ。勝手に会いに行こうとされても困るからね。そういうことする子じゃないと思うけどさ」
「…随分、肩入れされるんですね」
このような被害は全国ではザラにある。いくら伏黒の同級生とはいえ、五条ほどの人物が被害者を匿った上に、ひとつの事案にこれほどこだわることは今までなかった。
「そう?かわいい女の子に弱くてね。それにこれから待ち合わせでさ」
デート前の若者のようにうきうきした様子で五条は部屋を出て行った。