第5章 夢の行方
2017年12月、埼玉事案 被害者
蓮見 鈴
2002年6月30日生まれ 15歳
山梨県出身
生誕地は不明。2005年6月30日、長野県との県境近くの山梨県の廃寺で倒れていた所を保護される。当時身元がわかるものを所持しておらず、小児科医の診察で推定3歳と断定。事件事故の両面で警察が捜査するも、所持していたのは緑色のガラス玉だけであり、本人からは名前(鈴)しか聴取できなかったため捜査は難航。結局家族の発見には至っていない。
以後、山梨県の児童福祉施設にて養育されていたところを2008年蓮見夫婦の養子として引き取られ、2009年に茨城県の小学校に入学、中2まで同県で過ごす。父親の転勤に伴い、2017年にさいたま市浦見東中へ転入した。
「すっごいじゃん、伊知地。短期間でよく調べたねー」
「他の仕事差し置いても第一優先って五条さん言いましたよね?」
「誕生日、保護された日なんだ。メモっとこー。
でもさすがに子どもが行方不明になったら、親が黙ってないでしょ。本当に身内割れなかったの?」
「山梨県及び近隣県の事件事故をあたったらしいですが、鈴という被害者はいなかったそうですよ。身内だと名乗り出る人もなかったそうですし」
「ふーん、不思議だねぇ。
……まだ何か持ってるでしょ、伊知地」
目隠しで見えないはずの群青色の瞳で五条は伊知地に白状しろと迫る。
伊知地は紺色のハンカチで額の汗を拭い取った。別に勿体ぶって隠しているわけではない。ただ、真実かどうかもわからない不確定な情報をおいそれと渡したくないだけだった。