第5章 夢の行方
三度目のスマホのアラームで目を覚ました新田は、隣のベッドに目をやった。
ベッドで寝ていたはずの鈴がいない。
(今日もやっちゃったッス……)
「新田さん、おはようございます!」
「鈴ちゃん、おはよッス。起こしてくれたらよかったのに」
「いえいえ!お仕事でお疲れのようですし!」
鈴は着替えを済ませて、洗面所で洗濯物をランドリーネットに入れていた。よくできたお嬢さんである。
一緒に暮らし始めて数日。タダ飯暮らしの負い目なのか、鈴は一生懸命家事を手伝ってくれていた。
世話をするのは自分の方なのに、と新田はうなだれる一方だ。
「わわ、新田さん、クロワッサン焦げちゃいました!」
「ちょっとぐらい、いいッスよ」
スーツに着替えた新田は鈴とテーブルを囲む。今日の朝食はクロワッサンと卵焼き。
にこにこクロワッサンを頬張る鈴は妹みたいにかわいい。弟以上に守ってあげなきゃと思う。彼氏なんかできたらぶん殴りそう。
「今日は会議があるので、少し帰りが遅くなるッス。ちゃんと高専の中で待っていてくださいッスね」
「一人でも帰れますよ?すぐ近くだし」
「ダメダメ。外で一人になるのは五条さんに怒られるんで。最近、タチの悪い呪詛師がうろついてるって話だし。いつ呪霊が出てくるかわからないッスから」
呪詛師。人を呪うことを生業としている人たち。
両親は彼らのせいでと思うと心臓が締めつけられるように苦しい。
今のところ、鈴は呪いを視認できるだけ。翠は五条が預かったままだし、呪詛師や呪霊に対抗する手段はない。
一人で高専の外に出るのは禁止されていた。