第2章 出会い
昨夜はあまり眠れなかった。伏黒くんのこと考え過ぎて。
(伏黒くんに会ったらなんて話そう…。昨日のお礼と、あと趣味は何ですかとか…?)
伏黒くんのことがもっと知りたい。仲良くなりたい。せめて普通に話せるように。
ドキドキしながら教室に向かって歩く。
そっと教室を覗くと、彼はまだ来ていなかった。
(…今日はちゃんとうまく話せるかな)
教室の入口で深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとしたその時、頭上から声が降ってきた。
「蓮見、おはよう」
振り返ると伏黒くんが立っていた。名前を呼ばれるのは実は初めてで、不意打ちに心臓が爆発しそう。
「お、お、おはよう!伏黒くん…」
伏黒は鈴を追い越して先に席に座った。
眠たそうにふわぁとあくびをして、カバンから教科書やペンケースを取り出している。
(お、お礼言えなかった…)
授業が始まってからも全然勉強に集中できない。
伏黒くんは私のことなんて見てない。絶対黒板しか見てない。なのに背中に視線が突き刺さっている気がして気になって仕方ない。
後ろを振り向いてプリントを配るだけでもドキドキする。指先がちょっと触れ合っただけで、もう大事件。
午前中の授業が終わった頃には鈴はヘトヘトだった。
(……どうしよう。
私この席で心臓が保ちそうにない…)