第2章 出会い
放課後、学校が終わると母親と一緒に速攻で眼鏡屋に行った。
幼い頃から目が悪く、メガネは自分の一部のように思っているし、縁の部分には大事なガラス玉がついている。宝石のようにキラキラしていて、鈴の瞳と同じ深緑色だ。
誰からもらったのか、記憶は定かではない。ただ、大事にすると約束したのだけはよく覚えていた。
肌身離さず持ちたいと駄々をこね、メガネと一緒になるように加工してもらったのは小学校に入学する時だ。
レンズの交換だけで無事にメガネは直って母と帰路に着く。
「それにしても何で壊したの?」
「ごめん、ちょっと転んじゃった」
「もう気をつけなさいよ」
心配性の母には男子に突き飛ばされたとは言えなかった。
言えばたぶん大事になるし、下校前にその男子達はボコられた後、まとめて校庭の木に吊るされていた(伏黒くんの仕業らしい)。
報いは十分に受けているしもうあんな嫌がらせ受けないだろう。
(それにしても、伏黒くんカッコ良かった…)
あの時のことを思い返せば今でもドキドキする。
元々落ち着いた人だとは思っていた。自分達みたいに騒ぐタイプじゃなくて。
間近で見た端正な大人びた顔、大きくて力強い腕。背は高く、頭上から響く低い声。
心の奥底がときめいてむずがゆい。こんな気持ちになるのは初めてかもしれない。
(どうしよう。伏黒くんのこと、好きになっちゃったかも……)