第4章 呪術高専①
2018年1月3日、東京の天気は晴れ。
運動場に鈴は一人佇む。
昨日頑張ってつくった雪だるまは、跡形もなく溶けてなくなってしまった。
「雪だるまなくなっちゃった…。皆で頑張ってつくったのに……」
最終的には真希と乙骨も手伝ってくれた。どこからか犬巻が持ってきた赤いバケツを頭に乗せ、木の枝を手に見立てた雪だるまはなかなかの出来で、皆が達成感に満たされたというのに。
「形あるものはなくなる、仕方ないさ」
「そうだけど……?」
独り言に返事をされて隣を見ると、そこには二本足で立っているパンダがいた。
(パンダが立って、しゃべった…?そんなことあるわけない…)
でもその姿はどこからどう見てもパンダだった。ファスナーもマジックテープも見当たらない。
(どこかわからない所にファスナーがついてるはず!)
そう自分を納得させる。
ここにはパンダの着ぐるみを着て過ごしている人もいるんだ。昨日の狗巻さんみたいに何か事情があるんだろう。
彼は呪言師で皆を危険に晒さないために、おにぎりの具でしか話さないと伏黒から聞いた。
率先して雪だるまづくりを手伝ってくれた、優しくて明るい人。
「あの!ここの人ですか?」
「そうだよ。俺、パンダ。埼玉の事件の子だよな。あの事件は気の毒だったな」
「え?パンダさん?」
「そうだよ、パンダ」
パンダの着ぐるみを着て、さらにパンダと名乗らなければならない事情があるのだろうか、と鈴は考え始めた。パンダって言わないと呪われちゃうとか。
不思議な場所だ。呪術高専って。