第4章 呪術高専①
(…気になる)
どこからか現れた乙骨と狗巻が鈴と話している。
すぐに打ち解けた様子で鈴は笑った。なんだが面白くない。
「もらった!」
真希から顔を逸らした隙に首元に武具を突きつけられる。
伏黒は大きなため息を吐いた。根が負けず嫌いだから、嫌々自主トレにつき合っているとしても負け続けるのはストレスが溜まる。
「何よそ見してんだよ」
「禪院さん、あれ」
「あ?憂太と棘じゃん。明日戻る予定だったろ」
二人とも年末年始は実家で過ごして、明日戻って来る予定だったのに一日早い。
自主トレは一時中断。真希と伏黒も二人の元へ歩く。
「真希さん!ただいま!」
「ツナマヨ」
「なんだよ、もう戻ってきたのか?」
「うん。やっぱり実家は居づらくって。狗巻くんに愚痴ったら、一日早いけど高専に戻ろうかって話になって」
「棘はよかったのかよ」
「しゃけしゃけ」
狗巻は問題ナシ!と両手で頭の上に大きな丸をつくった。
「ま、ちょうどいいか。相手に不足してたんだよっ!」
「わー!真希さん!?待って!」
真希はここぞとばかりに乙骨に飛びかかった。乙骨はぎりぎりで避けると広い運動場を逃げ回った。
(あー、助かった…)
真希のしごきから解放された伏黒は一日早く戻ってきてくれた乙骨に感謝した。
「昆布…」
狗巻は心底同情した顔を向けたが、二人を止めるようなことはしなかった。
鈴の足元の雪だるまのなりかけを指差す。
「狗巻さんも手伝ってくれるんですか?」
「しゃけ!」
伏黒と狗巻も手伝って、雪だるまづくりは再開された。