第4章 呪術高専①
雪は止む様子はなく降り続く。
「やっぱり雪だるまつくれそう!ね、真希さん!」
帰り道も鈴は乗り気ではない真希を誘い続けていた。
ついには、雪だるまつくーろー♪と歌い始める。普段ならここらで真希の堪忍袋の緒が切れるはずだが、そうならないのはわりと鈴のことを気に入っているからだと後ろから眺めていた。
「コイツなんとかしろよ、恵」
「別に雪だるまぐらいいいじゃないすか」
「だから甘いってんだろ!」
だからといって俺に切れるのはやめてほしい。
「私は自主トレしたいんだよ。恵、つき合え。
鈴、終わったら一緒につくってやるよ」
「え〜?」
鈴は不満げに唇を尖らせた。こういう顔のことを真希は面白いと言ってるのだろうか。
(ていうか、またか…)
「…俺は拒否権ないんですか?」
「当たり前だろ」
「……」
࿐༅
雪がほどよく積もった高専の運動場で真希と伏黒が自主トレをしているのを横目で見ながら、鈴はしぶしぶ一人で雪だるまをつくっていた。
ぎゅうっと握りながら雪玉をつくる。
(これ転がしてたら、雪だるまできるんだっけ?)
数少ない経験を思い出しながら、一人格闘する。
(あんまり大きくならないなぁ…)
鈴がイメージするような、彼女の背丈ほどの大きな雪だるまをつくるのはなかなか労力がいりそうだ。一人じゃ難しい。
「雪だるま、つくってるの?」
声をかけられて、初めて目の前に少年が二人立っていることに気がついた。
優しそうなタレ目の人と、口元まで服で覆っている人。二人とも鈴より少し年上に見えた。
「僕たちも一緒につくろうか。狗巻くん」
「しゃけ!」
「えっと、高専の子じゃないよね?僕は乙骨憂太、こっちは狗巻棘くんだよ。僕たち一年なんだ」
「明太子」
「蓮見鈴です。あの、五条先生や家入さんにお世話になっていて…。それから、伏黒くんとは同級生で…」
「そうなんだ、五条先生は僕たちの担任だよ。いい先生だよね!」
乙骨は他の生徒が絶対言いそうにないことを言って破顔した。