第4章 呪術高専①
鈴が食べ切ったカップそばを片付けていると、スマホがぽこんぽこん鳴った。
五条がLINEで連絡してきているのだ。伏黒は面倒くさいから未読スルーした。
頼まれていたお茶は玉犬に届けさせたし、目上の人ばかりのあの場に戻りたくない。そもそももうお開きだろう。
(もうすぐ年越しだな…)
伏黒は時計を見る。同級生と年越しを過ごすなんて、何か変な感じでくすぐったい。
明日も用事はないし何時まで居てくれたってかまわない。ただ家入には伝えておいた方がいいだろうか。医務室に蓮見がいなければ心配するかもしれない。
伏黒はLINEで家入に手短に連絡した。散々酒を飲んでいたが、ザルの家入からはすぐに"了解"とだけ返信が来た。
泣き止んだ鈴は現在の状況を正確に理解しようとしていた。
伏黒の家に上がり込んで、カップそばをごちそうになって、彼の目の前で両親を思い出して散々泣いた。
(私、何やってんの……?)
冷静になればなるほど、顔から火が吹き出しそうだ。一刻も早く立ち去りたい。足が痺れて立てないけど。
「んーー!!」
痺れに耐えながら、両足を伸ばすと激しい痛みが走る。一人悶えていると、伏黒が鈴のななめ後ろのベッドに腰かけた。
「…足、痺れたのか?」
「いや、あの、その……。
今日は伏黒くん、ありがとう」
感謝するしかなかった。こんなにちっぽけで弱くて、泣いてばかり私をただの同級生というだけで、親切にしてくれるのだから。
(伏黒くんと両想いになれる子は幸せだな…。こんなに優しいんだもん)