第4章 呪術高専①
医務室にいた鈴はごろんと寝返りを打つ。ここ数日寝てばかりで全然眠たくない。
毎年大晦日は何をして過ごしていただろう。両親と紅白を見て、年が変わる頃に年越しそばを食べたっけ。翌朝は初詣に行って。
あの事件さえなければ、今日だってきっと。
泣きそうになって堪えられたのは、医務室のドアが開く音が聞こえたからだ。
カニ鍋を食べに行った家入が戻ってきたのだろうか。
(お腹空いた…。せめてカニ鍋じゃなかったらよかったのに)
暗い部屋でひとりぼっちは寂しかった。
パーテンションが遠慮がちにゆっくり開く。中をうかがうように顔を覗かせたのは、予想とは全く違う人物だった。
上体を起こしていた鈴はその姿を見て仰天した。
「ふ、伏黒くん…!」
「驚かせてごめん。一応これ」
手渡された紙袋の中にはお粥が入ったタッパー。
「なに?」
「カニ雑炊」
(カニ…)
鈴の顔が曇ったのを見て、伏黒はやっぱり、と呟く。
「甲殻類アレルギーだったよな?先に言ってたら、五条先生なら別のもん用意してくれたぞ?」
「え、なんで知ってるの?」
「病院で会った時、言ってただろ」
「そうだっけ…?」
夏休みに祖父の見舞いで訪れた病院で偶然出会った時、べらべら一人でしゃべった記憶がある。何を話したかは覚えてないけど。
「で、腹減ってねぇの?」
「べ、別に」
そう言った途端、鈴のお腹がぐぅーと鳴った。赤面した鈴は顔を覆う。何でこのタイミングで。
「……うちでなんか食べるか?」