第4章 呪術高専①
ぐつぐつと煮えるカニ鍋を囲む呪術師たち。
ぐるりと全員を眺めると五条は不満気にため息を口を尖らせた。
「硝子、なんで鈴ちゃん連れてこないのさ?」
「食欲がないって。昨日の今日だし、仕方ないだろ」
来たばかりのはずの家入は、もう日本酒の一升瓶を空けそうだ。
「あんな年下がタイプだとは知らなかったよ、バカ目隠し」
真希はカニの殻に苦戦しながら、五条に引いていた。ちゃん付けで誰かを呼んでいるところなんて見たことないし、気持ち悪い。
「真希、歳近いんだからよろしく頼むよ。鈴ちゃんも心強いでしょ」
「だからキショいつってんだろ!」
正直鈴は真希が仲良くしたいタイプではない。あんな弱そうなの、ムカつくもやし以下だ。
そんなやりとりを聞きながら、伏黒は悶々としていた。
結局あの後、色々考えてしまって、無限ループにハマってしまった。
本当に蓮見に呪力があるのかとか、もしかして術式まで持っているんじゃとか、それなら彼女は呪術師として…。
いやそんなはずない、蓮見とは生きる世界が違うの繰り返し。
伏黒は無心にカニの殻を剥きながら、現実逃避するしかなくなっていた。
࿐༅
あらかた皆がカニを食べ終わった頃、新田が口を開く。
「これシメはどうするッスか?食欲なくても鈴ちゃん、雑炊なら食べれるんじゃないスか?」
「いい案だね、新田。冷凍のご飯あるよ」
意外と生活力のある五条である。
温めたご飯と卵を入れると、美味しそうなカニ雑炊が完成した。
新田はカニ雑炊を人数分取り分けた後、鈴の分をタッパーに入れた。
「飲み物もなくなりそうだし、鈴ちゃんに届けるついでに自販機で買ってくるッス!お茶でいいッスか?」
自販機、という言葉で何かを思い出した。そうだ、あの病院で会った時ーー。
「新田さん、俺行きます」
「え?でも…」
「そこのシラフの酔っ払いの相手でもしといてください」
「は?」
伏黒は五条の相手を新田に押しつけると、タッパーを引ったくるようにして部屋を出た。
「アイツ、最近変じゃね?」
真希の指摘に、シラフの酔っ払い扱いされた五条はんふふっと笑った。