第4章 呪術高専①
玉犬の術は解かずに伏黒は鈴と高専内の散歩に出かけた。
晴れているが風は冷たい。ただでさえ、正月休みで人がいないから、外を歩いているのは二人と二匹だけだった。
「わぁ、寒いねー」
「そうだな」
「人いないねー」
「そうだな…」
会話が続かない。そういえばマラソン大会以降避けられていなかったか。今頃理由が気になった。
「蓮見」
「ん?」
鈴の翡翠色の瞳がこちらを向き、寒さのためか頬は赤い薔薇のように染まっている。五条ほどの目力はないがその透き通った瞳は色々なものを見透かしそうだ。
なぁに?と鈴は微笑む。
蓮見はこんな顔をしていたんだっけ。こんなにーー。
「あー!伏黒くん、連れ回したらダメッスよ!こんな薄着で鈴ちゃん風邪引いたらどうするんスか」
猛スピードで新田が駆けてきた。弟と同い年という鈴の世話をしたくて仕方ないらしい。
「全然、大丈夫ですよ」
「大丈夫じゃないッス!家入さんがなかなか戻って来ないって言うから様子見にきたら。
伏黒くんは五条さんが探してたッス。部屋に来てほしいって言ってたッスよ」
鈴は後ろ髪を引かれるように伏黒をちらっと見たが、新田に無理やり連れ戻された。
(行きたくねぇな……)
一人ぽつんと取り残された伏黒は五条は何の用かと考える。面倒事を押しつけられるのか、考えるだけでも頭が痛い。