第3章 不平等な現実
「遅い!」
「五条さん、せっかちッスね。年頃の女の子なんだから、ゆっくりシャワーでも浴びたいッスよ」
鈴を待つ間、五条は新田が淹れたコーヒーに砂糖をぼたぼた落として、雑にかき混ぜた。
「硝子、何かお菓子ない?」
「甘い物は苦手なんだ。あるわけないだろ。
伏黒があの子に持ってきたのならそこの棚の上にあるけどー」
「んー?うわ、山積みじゃん。恵あいつ何やってんの?
チョコないかな。このポッキー超美味そう」
「五条さん、勝手によくないッスよ?」
「いーの、いーの!ちゃんと買ってくるから。
それにしても恵がねぇ…」
(ただの同級生じゃないんかねぇ。最近、恵そわそわしてるし…)
「そういや、伏黒は?今日は見舞いに来てないな」
「真希とおつかい。明日は年越しだからね。カニ鍋するから、硝子と新田もおいでよ」
「いいんスか?やった!」
࿐༅ ࿐༅ ࿐༅
五条に頼まれて、伏黒は真希と買い出しに来た。
「先輩は帰省とかしないんですか?」
「ハァ?するわけねぇだろ、あんなクソ実家!」
真希に思いきり睨まれて心底聞くんじゃなかったと思った。
乙骨と狗巻は実家に帰省し、パンダも学長と旅行に行った。急な任務がない限り、呪術師にも正月休みぐらいはある。
今、高専の寮で過ごしているのは真希と伏黒ぐらいだった。
「買い出し終われば、自主トレ付き合えよ」
「またですか?」
「仕方ないだろ。パンダがいねぇんだから」
冬休みに入ってからはほぼ毎日真希の稽古に付き合わされている。武具を振り回されて、生傷が絶えない。もう五条先生に頼めばいいのに。
カニ鍋の材料を買って帰る途中、ケーキ屋が目に入った。ショーウィンドウ越しに覗くと、色とりどりのケーキやシュークリーム、プリンなどが並んでいる。こういうのは女子の方が詳しいんだろう。
(蓮見、こういうの好きそうだけどな…。あいついい加減起きただろうか)
泣き疲れて眠る蓮見の顔を思い出した。
俺に何がしてやれるんだろう?