第3章 不平等な現実
「ベッドにいないから、心配したんスよ!そんな薄着でどこ行ってたんスか!?」
医務室に戻ると、金髪の女の人に詰め寄られた。誰だろうときょとんとしていると部屋の奥に手を引かれて連れて行かれる。
「起きれるようになったんなら、シャワー浴びて着替えるッスよ!家入さん、シャワー借りますよ!五条さん覗かないで!」
「新田は世話焼きだね〜。よろしく」
鈴にくっついてきた五条はシャワールームの前でひらひら手を振る。
「今から事情聴取?」
「体調が大丈夫ならね。親戚がシロなら引き取り手を探してもいいし」
「どうだか。短時間からで頼むよ」
鈴が高専で保護されている理由のひとつは、身内に呪詛師に依頼した人間がいる可能性があるからだ。鈴が生きているとわかればまた呪殺しようとするかもしれない。そのため五条の指示で世間的には行方不明のままにしていた。
(すごい生き返ってる感がある……)
頭と体をごしごし洗って、シャワーを浴びる。久しぶりのシャンプーは爽快感がたまらなかった。
(お父さん、お母さん……。夢みたいだけど現実なんだよね…)
家族を喪ったのか信じられなくて、辛くて、苦しくて、痛くて、飽きるくらい泣いた。これからどうしたらいいのか見当もつかない。
(ここはどこなんだろう?五条先生や家入さんは警察の人じゃないのかな?)
事件の朝のことを思い出した。あの日、何事もなく朝起きて学校の準備をして部屋を出た。
異臭がして、リビングに行くと両親の遺体が転がっていて、まるで怪物に食いちぎられたようだった。
思い出したら胸が苦しくなって、上手く呼吸ができなくなる。止まっていたはずの涙が溢れた。
どうしたらいいかわからなくなって、そのまま座り込んでから記憶が残ってない。
何時間経ったのかもわからないまま、突然伏黒くんが現れた。ごめん、と言いながら警察の人が来るまでずっと抱きしめてくれていた気がする。今更だけど、すごく謎だ。
(あの時、なんで伏黒くんが…?)