第3章 不平等な現実
青空は天高く、冷えた空気が心地良い。山に囲まれていて、東京なのが信じられないぐらい空気が澄んでいる気がする。
鈴が周囲を見回すと広い土地にお寺や神社のような日本風の建物がたくさん建っていた。
毎日泣きながら寝てそれにもいい加減飽きたのか、やっとベッドから出る気になった。
病院のような所にいるとはなんとなくわかっていた。親戚が誰も見舞いに来ないのは少し不思議には思ったけれど、心許せる親戚はいないから逆にありがたかった。
パーテーションで仕切られただけの簡易ベッドを出ると目の下に隈がある、きれいな女の人がいて、医者の家入だと名乗った。
「気分は大丈夫?ここは呪術高専って所だけど、もう少ししたら説明できる奴が来るから待ってて」
どうやら普通の病院ではなかったらしい。
少し外の風に当たりたいと家入に言うと、無理せずすぐに戻ること、と言って点滴を抜いてくれた。
気分は悪くないのに頭がふわふわして、足取りがおぼつかない。
(ずっと眠ってたせいかな)
やっぱり中に戻ろうと引き返すが、少しの段差で転びそうになり、前によろけると誰かにぶつかった。
「わ…、ごめんなさい」
「やっと起きたんだね、鈴ちゃん」
顔を上げると、いつかの白髪の背が高い人が満面の笑みで立っていた。
「ええと、伏黒くんの後見人さん?」
「せいかーい!僕は五条悟。五条先生って呼んで?」
「五条、先生?」
「ああー、素直でかわいいっていいね!でも寒いし中に戻ろっか。君には聞きたいことが山ほどあるんだよね」