第3章 不平等な現実
事件後、鈴は呪術高専で家入硝子の医務室にいた。
無傷だったが精神的なショックが大きく、衰弱の度合いが強かったからである。家入や補助監督の新田が色々世話を焼いているが、毎日泣いているか眠っているか。
さっさと親戚にでも預けるべきなじゃないかと思う。その方が蓮見にとってもいいはずだ。
「蓮見はどうですか?」
「どうですかって、君は暇なの?」
伏黒は毎日鈴の様子を見にきていた。会話もままならない彼女の様子をそっと見ては帰っていく。
一週間近く経ち、最近は家入が半端呆れたような顔をして迎えるようになった。
「変わらないよ。食事をまともに摂れないから点滴が外せない。水分ぐらいちゃんと摂って欲しいんだけどね」
伏黒は律儀にありがとうございますと言い、鈴の所まで行くとベッドのそばの棚の上にお菓子を置いた。今までも色々持ってきているが食べた形跡はなく、山積みになってきている。
鈴は泣き疲れた顔で眠っていた。赤くなった瞼が痛々しい。
結局、彼女の家を襲った呪霊は見つかっていない。家にあった一級呪物はその呪霊に取り込まれたのだろうけど、呪詛師の見当はついているようだ。
一般人から依頼を受けて、法外な報酬を受け取る代わりに相手を呪い殺す。闇サイトで探せば呪詛師を紹介してくれる業者なんていくらでもいる。問題はだれがそんな依頼をしたかを調査している途中だ。