第3章 不平等な現実
鈴の家は、10階建てのマンションの8階だった。全速力で走ってきた伏黒は呼吸を整える。
マンションの入口はオートロック。インターホンを押しても返答はない。一旦外に出て、人目につかないように鵺を呼び出し背に乗った。
8階の非常階段に降り立って、マンションの中に入る。不法侵入のようなことをして、胸が痛まないわけではない。ただ、無事を確認できればいい。それだけだった。
8階フロアに足を踏み入れるとゾクゾクするぐらい残穢の気配が襲ってきた。
(なんだこれ…!?)
迷わず玉犬、白と黒を呼び出す。1級以上の呪いがいても何ら不思議じゃない。
高鳴る心臓を落ち着かせながら、教えてもらった部屋を探した。
ーー803号室。
このフロアで最も残穢が強い。最大限に警戒しながら部屋をノックしてドアノブを回すが、当然のようにドアには鍵がかかっていた。
(…壊すしかないか)
もし鈴や家族が無事なら謝ればいいだけだ。場合によっては五条が弁償してくれるだろう。
「玉犬、行くぞーー」