第3章 不平等な現実
伏黒は普段通りに起きて学校へ向かおうとしていた。
「こんな日ぐらい休めばいいのに」
寮の玄関口でばったり会った五条はそう言った。
(いや、あんたのせいだよ…)
鈴のメガネについているガラス玉。それが特級呪物の可能性があると五条はいう。
そんなはずはないと伏黒は思う。鈴から呪物の気配も、ましてや呪力も何も感じたことはない。
あいつは呪術界とは何の関係もない一般人だと自分に言い聞かせる。それを確かめたい。
学校に着くと、鈴の席は空席のままだった。いつもならもう登校しているはずなのに。
キーンコーン…、と耳慣れたチャイムが鳴り、教室に入ってきた担任が出欠を確認する。
「蓮見は遅刻か?連絡なかったけど、林(絵里奈)、何か知ってるか?」
家が近所でよく一緒に登校している絵里奈も、いいえと不思議そうに返事をした。
退屈なホームルームが終わっても、鈴は現れなかった。
伏黒は教室の隅でこそこそスマホをいじる彼女の親友たちに声をかけた。
「蓮見と連絡取れたのか?」
「何であんたに教えなきゃいけないのよ。…取れてないけど」
どこか心配そうな親友たち。そりゃそうだろう、今まで無断欠席なんてなかったのだから。
「…蓮見の家、知ってるか?」
「だから、何であんたに…!」
帆花は伏黒に食ってかかる。マラソン大会以来、ずっとこんな険悪な感じだ。
まあまあ、と絵里奈がなだめる。
「鈴の家なら紅葉町の方だよ。伏黒、何か用でもあるの?」
「本、貸してたんだよ(嘘)。今日、返してもらいたかったんだ」
絵里奈から詳しい住所を聞いた伏黒はその後の終業式をすっぽかした。
なぜだか、胸の奥がざわついて仕方なかった。