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君のガラス玉越しに【呪術廻戦】

第3章 不平等な現実



 ドアを壊した玉犬に続いて、室内に入った伏黒は絶句した。
 目眩がするぐらい強い残穢。
 廊下に飛び散る、おびただしい量の血痕と血の臭い。

 残穢を辿って、リビングに入るとそこには地獄絵図が広がっていた。

 人間の肉体や血液がそこら中に散らばる中、制服姿の鈴が茫然と座り込んでいた。涙は枯れ果てて、動くことを忘れてしまった人形のように。
 そばにはかつて母親だったものの、左半身が欠落した遺体があり、膝の上には男性の腕と思しきもの抱いていた。


「……蓮見…」
 大丈夫かと言いかけて、ぐっと堪えた。大丈夫なわけない。

 どうしてもっと早く、来てやれなかった。
 どうしてもっと早く、気づいてやれなかった。

 どうして不平等な現実のみが平等に与えられるのだ。



 伏黒の声にピクリと鈴は顔を動かす。メガネの縁についたガラス玉が不自然にキラキラと輝きを放っていた。

「伏、黒、くん…?

どうして…、
どうしてこんなことに……」

 一点を見つめたまま、手も体も冷え切って、小刻みに震える彼女を抱きしめる。

「……ごめん、蓮見」
 それしか、言えなかった。






 鈴にとって不運だったのは、事件が起こったのが百鬼夜行の翌日だったために発見が遅れたこと。
 窓を含むほとんどの呪術師が休日であり、伏黒が来るまで彼女は凄惨な現場に一人取り残された。

 程なくして、伏黒の連絡で高専関係者が現場に到着し、鈴を保護。呪詛師の関与の疑いで調査が行われることとなった。


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