第2章 出会い
「保健室行くか?」
「平気、これくらいすぐ治るよ」
伏黒くんにいつになく距離が近くてどきどきする。心配なのは膝の傷なんかより、鼓動が早まったままの心臓の方だ。
「伏黒、すっかり蓮見のナイト気取りかよ?」
知らぬ間に田辺と取り巻きに囲まれていた。一部始終見られていたのだろう。
(あー、めんどくせぇ…)
「あ゛?」
伏黒が睨みをきかすと相手はたじろぐ。今まで何度かボコったのを思い出したのだろうか。
「だ、だから蓮見のことどう思ってるんだよ?」
クラス中の皆が鈴が伏黒に向ける気持ちに好意的なわけじゃない。田辺なんかは特に。
「どうって、別にどうも」
「別にどうもって、女子として意識してたりは…」
「だからないっつってんだろ」
なんでこんな面倒なことに巻き込まれなきゃいけないんだろう。蓮見だって、きっと迷惑なはずだ。
そう思って隣に立っている鈴を見る。
彼女は翡翠色の瞳からぽろぽろ大粒の涙を流していた。