第2章 出会い
「あー、僕からお茶に誘うことなんてないのになー」
「五条先生でもナンパとかするんですね」
いつものごとく、伊知地が運転する高専への車中。後部座席には五条と伏黒が並んで座る。伏黒は軽蔑するような視線を向けた。
蓮見はまた学校でね、と母親と一緒に帰って行った。
「恵、友達いたんだねー」
(友達なんだろうか?蓮見は)
別に友達と呼べるほど仲良くない。連絡先も知らないし。そもそも今まで友達と呼べるほど仲良くなった奴なんていない。
「今度参観日とか行っちゃおうかなー」
「やめてください。マジで」
「恵ったら、照れちゃって」
(来たらマジで殴ろう)
伏黒の決意は固い。
(さて、蓮見鈴っと…)
五条はスマホに彼女の名前を打ち込む。
それほどまでに鈴が彼の興味を引いたなんて、伏黒はまだ知らない。
࿐༅ ࿐༅ ࿐༅
その後、祖父が亡くなったと鈴の父に連絡がきたのは夏が終わる頃だった。
鈴は葬式には参列しなかった。というのも父と叔父は不仲で鈴のことも嫌っていたからである。親戚づきあいの度に辛く当たられた。
それに遺産のことでも前々からもめていたらしい。両親は醜い争いを子どもには見せたくなかったのだろう。