第2章 出会い
昔、犬を飼ってたの。白い毛がふわふわしてて、大きくて、すごくお利口さんでー。私猫も好きだけど、犬も大好き。あ、伏黒くんはどっち派?
という話の途中で、伏黒のスマホが鳴り出した。
「あっ、ごめんね。私ばっかり一方的にしゃべってて。電話出ていいよ」
着信の主は五条。あまり出たくはないが、電話は一向に鳴り止まない。
「…伏黒です」
『あー、恵?どこ行ってんの?先生からの話もう終わったよ』
「…今から戻ります」
ハァ、とため息をついて伏黒は立ち上がる。
「悪い、蓮見…」
「ううん。私こそおしゃべりに付き合ってくれてありがとう」
「こっちこそ気分転換になったよ」
蓮見と話していたら、あのもやもやした、悪い感情はどこかへいった。
伏黒はほんの少しだけ微笑む。
「ありがとう」
「そんな…、私も…」
鈴はゆでタコみたいに顔を真っ赤に染める。
伏黒くんと偶然出会えたのが嬉しくて、一人でべらべらしゃべってしまった。それなのにお礼の言葉まで聞けるなんて。今日はなんて幸せな日。