第2章 出会い
「やっぱり伏黒くん!」
鈴は満面の笑みを浮かべた。
少し驚いて、もやもやしていた負の感情が小さくなる。
「…蓮見も、誰かの見舞いか?」
「うん、おじいちゃんの。ちょうど叔父さん達もお見舞いに来て、大事な話があるから私はどこかで待ってるように言われたの。
私もジュース買おうっと」
暇だから、と口実をつけて鈴はどきどきしながら伏黒を誘った。場所を病院の中庭に移動して、ベンチに二人で座る。
(あーあ、伏黒くんに会えるのならもっと可愛い服着てきたらよかったな)
今朝寝坊して、急いで着替えた服のままだった。
ピンクの半袖パーカーとボーイフレンドデニム。クローゼットにはワンピースもスカートもあったのに。
浮き足立つ鈴とは裏腹に、元々口数が少ない伏黒は今日はさらに静かだった。
(伏黒くん、今日はなんか元気ない…?そういや誰のお見舞いなんだろう?)
伏黒の顔を覗き込む鈴。不意に彼がこちらを向いて、長いまつ毛がばさばさと瞬きで揺れた。かっこいい顔。
「…何?」
「や、あの、伏黒くん宿題終わった?受験勉強進んでる?」
「あー、一応…」
そう答えたものの、宿題はさっさと終わらせたが、受験なんてないからその勉強なんてしているはずなかった。
五条の任務に付き合わされたり、真希に体術習ったり、図書館に行ったりして過ごしている。
「そっかぁ。受験勉強大変だよね。私も今、英語でつまづいてて…」
適当に相槌を打つ伏黒に、鈴は話を続けた。それは途切れることがなくて。
なので彼女の家族構成や両親の職業から食物アレルギーまで把握してしまった。元々記憶力がいい方なので、たぶん忘れないだろう。