第2章 出会い
中3に上がって間もなく、津美紀が呪われた。
何も分からないということだけが分かって、津美紀は寝たきりになった。
(バカ姉貴…)
伏黒が見舞おうが悪態をつこうが、彼女が目を覚ますことはない。呪いが解けない限り。
「恵、先生の話があるからそろそろ行かないと」
ドアのそばにいた五条が声をかけると、伏黒は無言で椅子から立ち上がった。
見舞いに五条が同行したのは、弟とはいえ未成年の伏黒だけでは病状の説明ができないからだ。
どうせ医学的には異常はないと言われるだけ。医者の説明に興味はない。ナースステーションでキャーキャー騒がれる五条をよそにロビーに向かった。
津美紀はまぎれもない善人だった。それなのに呪われる世の中の不条理。
(くそっ…!何で津美紀が…)
自販機で炭酸飲料を買って、ゴクゴク飲み込んだ。
恨み、後悔ーー。
呪霊の元となる負の感情に支配された心の中。それらを解き放ちたいのに、なかなか上手くいかない。
「伏黒くん?」
周囲の喧騒を割って入るのは少し幼さが残る、柔らかい声色。
振り返ると蓮見鈴が立っていた。