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君のガラス玉越しに【呪術廻戦】

第2章 出会い



 八十八橋は今も生活道路として使われている、古い橋だった。心霊スポットとして有名なのは橋の下。さまざまな怪異が絶えず、夏になると肝試しをする人が増えるらしい。
 そんな話をしながら三人が橋のたもとに着くと先客がいた。

 背の高いスーツを着た人が橋の中央から辺りを見渡していた。一見、外国人のようにも見えるが変わったメガネをかけていて、よくわからない。ただサラリーマンのような風貌が場違いさを強調していた。

「あの人、何やってんだろ?話しかけてみる?」
「まさか。ハローとか言われたらどうすんの?」

 絵里奈と帆花の興味はすっかりその人物に移ってしまって、ひそひそ話しているとまさかの向こう側から歩み寄ってきた。

「すみません。この心霊スポットは地元では有名なんですか?」

 見下ろすように話しかけられたのは鈴で、戸惑っていると帆花が代わりに答えてくれた。
 
「ここらへん住んでる人はみんな知ってると思いますけど…」

 なるほど、とその人は小さく呟いた。

「もしかして、オカルト雑誌の編集者とか?」
「えー、意外とユーチューバーかもよ?」

 すっかり心霊スポットどころではない二人を横目に、鈴は橋の下を覗き込んだ。

「…この下、川があるの?」

 橋の下は谷のようになっていて人の背丈ほどの雑草が生えていたが、最も低くなっている所にほんの少しだけ濁った水が流れていた。
 
「普段はほぼ枯れてるんだけどね。大雨が降った時だけ濁流になるの」
「ーー川を渡ると向こう側への道が開くことがあるから気をつけないと」

「鈴、何変なこと言ってんの?」
「昔、おばあちゃんに聞いたの…」

 鈴は自分で言いながら首を傾げた。
(あれ私、おばあちゃんいたっけ…?)


 橋の下の茂みはうっそうとして薄暗く、人の姿も確認できないが、それ以外はなんてことないただの橋だった。車も普通に何台も通るし。

「ほら、大丈夫だったでしょ。お腹空いたしもう帰ろうか」

 帆花は拍子抜けしたみたいだった。別に暑いだけだったなぁ、なんて言いながら、三人ともちらりとさっきのサラリーマン風の人を見る。
 その人もただ、橋の下を見つめていた。

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