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君のガラス玉越しに【呪術廻戦】

第2章 出会い



 私の心は大雨警報発令中。
 図書室でのやり取りの後、センチメンタルな気分になってたら本当に雨が降り出した。

(午前中は晴れてたのに…)

 帰る前に降り出した雨を恨めしそうに見上げる。

 中学を卒業したら伏黒くんとは離ればなれ。
 きっと私は伏黒くんになんとも思われてない。ただのクラスメイト。わかっていたことだけど、その事実が重くのしかかる。

 じめったらしい、鬱々とした気分を吹き飛ばせそうもないけど傘を広げて歩き出す。

(同じ高校に行きたかったなぁ…)
 そしたらもっと仲良くなれて、もしかしたら彼女になれたかもしれない。
 手を繋いで遊園地でデートして、観覧車で一緒に夕日を見たりなんて妄想してた。

(そんなにうまく行くわけないよね)
 ありもしないことを想像してばかみたいだ。


 隣でぱしゃんと水たまりの水が跳ねる音でハッと我にかえり、振り向くと傘がなく少し濡れた伏黒くんが立っていた。

(あ、伏黒くんだ…)
 なんだか少しだけ、気まずい。


「ごめん、散ったか?」
「ううん、平気。
あの、私折り畳み傘持ってるから、伏黒くんこれ使って」

 内心ドキドキしながら、うつむいて傘を差し出す。伏黒くんが雨に濡れて風邪でも引いたら大変だ。毎日会えるのが楽しみなのに、学校で会えなくなっちゃう。

「いや、いいよ」

 引きつった顔で断られた。それもそのはず、私が持っているのは鮮やかなピンク色の傘だ。

「ごめん。こっち…」
 慌ててかばんから取り出した紺色の折り畳み傘を伏黒くんは受け取ってくれた。
 少しだけ口元に笑みを浮かべて。

(わぁ…っ!今の顔可愛い!!)

「ありがとう。また今度返すな」
「うん!」

 二人で門の方へ向かう。正門までだけど、こうして肩を並べて歩けるなんて嬉しい。
 ほんの一瞬の時間を共有して、晴れ間がのぞいたみたいに心の中まで明るくなるから、恋って不思議。

「じゃあ」
「また明日ね。ばいばい」

 伏黒くんは電車通学。駅に向かっていつも歩いているから私とは逆方向だ。

 後ろを向いたまま手を振り返してくれて、幸せ度はMAX。
 高校は一緒じゃなくても、まだまだ中学校生活は残っているんだもん。片想いでも悔いがないようにしようっと。


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