第2章 出会い
ちくちくと背中に突き刺さる視線が痛い。
元々視線には敏感だ。たいがい学校でジロジロ見つめてくるのは低級呪霊なのだが、この日は違った。
いつものように図書室で暇つぶし。視線が煩わしくて振り返ると深緑色の瞳と目が合う。
伏黒が見つめ返すと、鈴は慌てて視線を外して本棚の影に隠れてしまった。
(…なんだよ)
同じ学年の女子の中でも小柄な彼女は本棚のそばでさらに小さく縮こまっていた。
「蓮見、なんだ?本が取れないのか?」
どの本だよ、と伏黒は本棚を仰ぎ見る。
「ち、違うの。伏黒くんに聞きたいことがあって……。あの、高校どこに行くのかなって…」
鈴の絞り出すような小さな声。緊張した様子で頬はピンクに染まっている。
進路は呪術師になるために呪術高専に行くことはとっくに決まっていたが、それを告げるわけにはいかない。
「あー…、東京の高校」
「…東京!?埼玉じゃないの?」
驚いた鈴は大きな声を出してしまい、図書室中の視線を浴びる。昼休みはもうすぐ終わりだし、二人で廊下に出た。
「東京の、どこ?」
「東京の郊外。マイナーだから蓮見は知らないとこ」
「そうなんだ…」
あからさまに鈴は落ち込んだ。何か悪いことをしてしまったようで居心地が悪い。
(東京なんて、卒業したら全然会えなくなっちゃう…)