第2章 出会い
2017年6月
蒸し暑い梅雨の最中、席替えをした。私は窓際の一番前。伏黒くんは廊下側の一番後ろになった。
放課後の教室に残って、絵里奈と帆花と少しだけおしゃべりタイム。
「最悪…。やる気出なーい」
「あんた、伏黒の前じゃ緊張して勉強が手につかないって言ってたよね?」
「それにしては離れ過ぎだよ……」
机に頭を置いて外を見る。3階の教室から見る空は梅雨の晴れ間で青空が広がっているのに私の心の中はどんより曇り空。
そんな鈴を見て、二人の親友は揃って嘆息した。
「ねぇねぇ、それよりこの進路のプリントどうする?」
ひらひらと絵里奈がはためかせたのは、今日のホームルームで配られた進路希望のプリント。
「私はN高校かな、制服可愛いもん。帆花はS高校?陸上部、有名だもんね」
「まぁねー。鈴はどうするの?」
「一応、K高校。家から近いし、塾の先生も校風いいって進めてくれたし」
「K高って、偏差値高めじゃん。大丈夫?」
「だから、お父さんが今年の夏休みは毎日夏期講習に行くようにって。旅行も行かないからって…」
鈴の成績ではその高校は合格ギリギリラインだ。受かるか落ちるか危ういところ。
「鈴のお父さんお医者さんだもんね。医学部に行って欲しいんじゃないの?」
「さすがにお医者さんは無理だと思うんだけど…」
父は県内の総合病院に内科医として勤めている。今回の転校も父の転勤に伴うものだ。
母は元看護師。そのため鈴も医療に携わる仕事に就こうとは思っていた。医者が無理でも看護師とか薬剤師とか。
でも二人と高校は別々になるのは寂しいなぁ。せっかく仲良くなってこんなにおしゃべりも楽しいのに。
そういえばーー、
「伏黒くん、どの高校に行くんだろ……?」
「あんたまた伏黒?」
親友二人は心底呆れた顔をした。