第2章 出会い
最近、図書室でよく蓮見に会う。あいつも本好きなんだろうか。
こそこそしながら図書室に向かうとやっぱり伏黒くんがいた。
一番奥の本棚は古びた本が並んでいて、人もあまり来ない。伏黒くんはその本棚の前に座っていつも本を読んでいる。あの場所が彼の定位置だ。
じっと見ていると本を読み終えたのか、立ち上がってこちらに歩いてきた。
(こっちくる!どうしよ…)
ふと本棚を見上げると、とあるシリーズ物の本が目に入った。魔法ファンタジーで映画化もされた名作。
(あ、これ。原作、読んでみたかったんだよね)
「よいしょ、と……」
本を取るふりをしてやり過ごそうと、鈴は背伸びして本棚の上の方に手を伸ばした。つま先立ちしても届きそうで届かない。
「…これか?」
横からにゅっと手が伸びてきて、長身の彼は軽々と本を取り出す。
(わ、伏黒くん!!)
「あ、うん。ありがとう」
「どういたしまして」
素っ気ないやりとりがこんなにも嬉しいなんて。チャンス到来とばかりに鈴は平静を装って話しかける。
「あの、この本は伏黒くん読んだ?」
「映画で見た」
(ですよね。私もそうだよ)
「伏黒くんは普段どんな本読んでるの?」
「…実話系、かな」
(実話系って、どんなの?ノンフィクションってこと?)
会話が思うように続かなくて、沈黙で空気が重たい。
(えっと、えっと、あとは…)
「…蓮見、本が取れなかったら言えよ」
そう言って、伏黒は鈴の横を通り抜けると違う本棚へ向かった。
(伏黒くん、優しいな……)
鈴は伏黒に取ってもらった本をぎゅっと抱きしめる。ぶっきらぼうな言い方の中に潜む優しさをかみしめた。
これじゃどんどん、彼のことを好きになるばかりだ。