第8章 不可逆的欠損
今日の今剣は、遠征どころか内番でもない。
本丸にいないはずがなかった。だからまず本丸中を探し回った。
あとは、本丸から移動する際に必ず使うゲートのログを、一つ一つ確認した。
だが、昨日の最後の遠征班が帰還してから、移動したログは残っていなかった。
何かしら操作したログもない。いつも通りの状態がそこに残されていた。
もちろん男士たちにも聞き回り、最優先で探してもらった。
男士たちは、驚くとか慌てるとかいった様子を見せなかった。
暗い顔で「そうか……」と予想していた悲劇が起きたとでも言いたげな反応をした。
どうしてそんな反応になるのか全くわからなかったが、今はそれどころではない。
彼らは協力して探してくれたが、今剣の姿はいまだに見つからない。
「他に俺ができることはあるか?」
審神者部屋にわざわざ来てくれたらしい。
鶯丸の声は、いつも以上に優しく聞こえた。
涙をとどめていた防壁が決壊しそうになる。
だが泣いている暇はない。
根拠はないが、一刻を争う予感があった。