第15章 回転不変:無題のノート
「ど、どうした!?」
慌てて尋ねるが、主は首を振った。無理に笑おうとして、失敗して、より涙の粒が大きくなっていた。もぐもぐとした口の動きが止まる。箸を握る手は、微かに震えていた。
彼女は一度目をつむって、それからゆっくりと開いた。
潤む瞳孔が、まっすぐ鶯丸を見つめる。涙が目尻から零れていく。
けれど主は、精一杯、笑おうとしていた。
「朝起きたらキミがいて、こうやって一緒に食事ができて、すごく幸せだよ」
「……俺も同じだ。なんなら今夜の懇親会をやめて、ここで一緒に食べてもいいんだぞ。というかそうしよう。なにかリクエストはあるか?」
「うん、ありがとう……」
「……主、助けが必要なんだろう? 主のためならなんだって力になる。教えてくれ、なにが主を泣かせている?」
主は首を振って、笑って言った。
「幸せを噛み締めてるだけだよ、鶯丸」
その日、政府の施設内で審神者が大勢殺された。
そしてその殺戮を引き起こしたのは、主だった。