第8章 不可逆的欠損
どのくらい経っただろう。今剣の行く先が気になった私は、襖をあけて廊下に出た。
すると、今剣はすぐ見つかった。
審神者部屋のすぐ隣の部屋で、隅っこにちょこんと眠っていた。私の羽織にくるまり、余った布を抱きしめて背を丸めている。
目蓋は穏やかに閉じられ、規則正しい呼吸音が繰り返されていた。
私の羽織に包まれている姿を見ると、小さい身体なのだなと、改めて思った。
自分の部屋に戻らず、こんなところで眠っているなんて。よっぽど眠たかったのだろうか?
あまりにぐっすり眠っているものだから、起こすのも憚られた。
こんなことなら、あのとき「いいよ」とひとこと言えばよかったのだ。
後悔が渦を巻き、目元が熱くなる。
今剣が私に一度でも嫌なことをしたか?
いや、一度もそんなことはなかった。
審神者部屋に足早に戻り、布団の類をかき集める。
なるべく音を立てないように今剣のもとに戻り、その小さく丸まった体に布団をかけた。
その間、今剣は起きることもなく、私の羽織を宝物のように抱きしめ、すやすやと寝息を立てていた。
明日、謝ろう。
いつでも眠りにきていいよと言おう。
……朝になったら、私の顔を見てくれもしないかもしれないけど。
それでも絶対に伝えるのだ。