第8章 不可逆的欠損
そんな私に構うわけもなく、政府は“中堅育成応援”などという標語を掲げ、経験値やドロップ率アップのイベントを始めた。
参加は任意とされているが、実質強制参加だった。不参加は評定に響くのだ。
そしてこのイベントの任務、やたらと達成条件が厳しい。
私の見方を言えば、突然男士たちとのコミュニケーションがとれなくなったのだ。
そして自分の体の不調。
いくら評定に響くとはいえ、今回は参加を見送ろうとしていた。
しかし、
「僕たちが力不足だと言うのですか?」
「俺たちはいらないってことかよ?」
「戦うためにここにいるのに」
男士からそんなふうに言われれば、参加せざるを得なかった。
非難と懇願が入り交じった、光のない瞳に射ぬかれて従うほかなかった。
武器として使われないこと、イコール価値のないものとして見捨てられること。
彼らの瞳は、そんな恐れでよどんでいるように見えた。
政府によるサーバーメンテナンスが終わったのは夕刻を過ぎた頃だった。
日課を終え、全身が重だるく疲れきっている。イベントへのエントリーだけをしておき、私は布団に倒れこんだ。