• テキストサイズ

【刀剣乱舞】ラプラスの演算子

第7章 望まれた悪夢





◇◆◇◆◇◆◇◆


 浮上してきた現実感をつかむ。

 と同時に、ゆっくりと細い光が視界に差し込んできた。

 悪夢が覚め、見慣れた天井が出迎える。

 それと同時に、ルビーを思わせる赤い輝きが降ってきた。

「あ……るじ……?」

「……加州」

 こちらを見下ろす彼の名前を呼ぶ。

 頭が、まだ痛い。長い長い夢を見ていたような、そんな感覚が全身を満たしていた。

 実際、似たようなものだろう。

 自分が「自分だ」と思っていたものは、誰かに編集されたものだったのだから。

 ゆっくりと体を起こす。

 こめかみが拍動する、不愉快な痛みが頭をぼーっとさせた。

 機械の駆動音が、男の声が、まだ頭の中で響いている気がした。



「あ、主ぃぃぃいいいいいいっっ!」



 その残響を、全力の絶叫が打ち破った。

 同時にものすごい勢いで後ろに倒れそうになる。

 加州が床に叩きつけんばかりの勢いで抱きついてきたのだ。

 ひしっときつく腕を回してくる様は、まるで俺が死の淵から奇跡的に生還したかのよう。

 続いて廊下からドタバタと慌ただしい足音が聞こえてくる。

 瞬きもしないうちに、ふすまが乱暴に開かれた。

「主!!」

「目を覚ましたのっ!?」

「あるじさん!!」

 本丸の全員が集まってきたらしい。すっかり泣き腫らして目を赤くしている者、現在進行形で大泣きしている者、病かと思うほど青ざめている者、表情はそう変わりないがなぜか服装がぐちゃぐちゃな者、など。みな一様に、一大事、という出で立ちだった。

「みんな……」

 加州に押しつぶされながら、息も絶え絶えに言えば、今度は視界が暗転する。
/ 223ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp