第7章 望まれた悪夢
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浮上してきた現実感をつかむ。
と同時に、ゆっくりと細い光が視界に差し込んできた。
悪夢が覚め、見慣れた天井が出迎える。
それと同時に、ルビーを思わせる赤い輝きが降ってきた。
「あ……るじ……?」
「……加州」
こちらを見下ろす彼の名前を呼ぶ。
頭が、まだ痛い。長い長い夢を見ていたような、そんな感覚が全身を満たしていた。
実際、似たようなものだろう。
自分が「自分だ」と思っていたものは、誰かに編集されたものだったのだから。
ゆっくりと体を起こす。
こめかみが拍動する、不愉快な痛みが頭をぼーっとさせた。
機械の駆動音が、男の声が、まだ頭の中で響いている気がした。
「あ、主ぃぃぃいいいいいいっっ!」
その残響を、全力の絶叫が打ち破った。
同時にものすごい勢いで後ろに倒れそうになる。
加州が床に叩きつけんばかりの勢いで抱きついてきたのだ。
ひしっときつく腕を回してくる様は、まるで俺が死の淵から奇跡的に生還したかのよう。
続いて廊下からドタバタと慌ただしい足音が聞こえてくる。
瞬きもしないうちに、ふすまが乱暴に開かれた。
「主!!」
「目を覚ましたのっ!?」
「あるじさん!!」
本丸の全員が集まってきたらしい。すっかり泣き腫らして目を赤くしている者、現在進行形で大泣きしている者、病かと思うほど青ざめている者、表情はそう変わりないがなぜか服装がぐちゃぐちゃな者、など。みな一様に、一大事、という出で立ちだった。
「みんな……」
加州に押しつぶされながら、息も絶え絶えに言えば、今度は視界が暗転する。