第7章 望まれた悪夢
「なんか……静かすぎない?」
ふと、加州が怪訝そうに呟いた。
彼は大広間から廊下に顔を出し、首をひねっている。
薬研もまねして、廊下に耳を出してみた。
盗み聞きするつもりもないが、たしかに静かすぎる気がした。
普段なら、審神者部屋のふすまが閉まっていようが、話の内容は判別できないまでも、ぼそぼそと人の話し声がもれてくる。
だが今、用事やら研修やらで、大将が本丸を空けているときの静謐さがあたりに満ちていた。
「主…………いるよねっ!?」
「いや、いるだろ」
加州がまぁまぁな声量で叫ぶ。
ついさっき見て話してただろうが、とツッコみたくなったが、今回は差し控えることにした。
さきほどと同じく油を注ぐことはないと思ったし、それに、ある書き込みが、記憶の海から浮上してきてしまったのだ。
『審神者部屋に引きこもりがちになって、ある日突然、消えちゃったんだ』
『昼食を持っていって、会話をしたすぐ後だった』
『皿からはまだ湯気が――』
かぶりを振る。
馬鹿馬鹿しい。
噂にかこつけて、誰かがおもしろ半分で作ったほら話かもしれないのに。
そう自分に言い聞かせるが、今日は妙に心が落ち着かなかった。
心臓がざわざわする。
そういえばあの書き込み、次の日には見られなくなっていたっけ。
「ね、ねえ、本当に静かすぎない? 二人とも生きてんの!?」
「あっ、おい!」