第7章 望まれた悪夢
審神者が、男士がと、どちらのケースもあるらしい。
例えば、審神者業に熱心だったのに、突然無気力になって任務をこなさなくなり、そのまま辞めてしまったり、辞めさせられたり。
男士たちと友好的関係を築いていたのに、突然男士との接触を絶ち、業務連絡だけになってしまったり。
ひどい場合は、いわゆるブラック本丸と呼ばれるものに変貌してしまったり。
そのまま行方不明の審神者もいるとかいないとか。
体調が優れなくなったことが境にもなるらしい。
ただでさえこんな状況なのに、なぜ、余計に不安になる情報を集めるのか。そしてそれを本丸に拡散するのか。
最初は「やめなって」と止めていた面々も、情報を入れられすぎてもう「気にしない」とか「聞かない」とかができる段階を越えてしまったらしい。
加州の話には基本食い気味だし、自分で情報を仕入れ始める男士もいる始末だ。
かくいう薬研もその一人である。
「……せめてどういう話か、教えてもらえればなぁ」
ため息まじりのぼやきが虚空にとけていく。
そうすれば、懸案事項のひとつが多少は解消されるんだが。
なんらかの事情があるにせよ、隠しごとをされているように感じてしまう。
なにかトラブルがあるなら、自分たちを頼って、巻き込んでほしい。
そしてそれはほかの男士も同じだろうと、薬研は思った。
加州は、審神者部屋にキッと一瞥を食らわせていた。
それはそれはうらめしげな視線である。
彼は「頼ってほしい」とか以外にも、大将に対する独占欲が突かれるのだろう。
まぁそれも、わからなくはないが。