第3章 特別演練
演練終了後、仮想空間から本丸に移動するまで準備が必要らしく、ちょっとした空き時間がうまれる。
この時間は、異なる本丸の男士たちの交流時間となっていた。
演練の感想戦から新発売のスイーツやゲームまで、話題はなんでもありだ。
鶯丸はもっぱら聞き手にまわっていた(鶴丸に最初まとわりつかれたが、彼は別の興味の対象を見つけたらしい。今は石切丸と式神を観察している)。
そばで1回目に対戦した本丸の一期一振、平野、前田と、厚が和やかに話している。
この前田が、なんとなく気になった。
さきほど目が合ったということもあるが、近づいてみて改めて思った。
どこか”懐かしい”ような気がするのだ。
それと同時に、奇妙な、ちぐはぐな違和感も覚えていた。
前田と二人で話す機会をうかがっていたが、一期一振の手前、なかなか言いづらい。
考えあぐねていると、前田の顔色が悪くなっているような気がした。
浮かべる表情にもどことなく生気がない。体調でも悪いように見える。
彼の肌は、こんなに蒼白かっただろうか。
「僕もいち兄みたいに重騎兵が装備できたらなぁ」
「ふふ、だけど銃兵には銃兵の、重騎兵には重騎兵の良さがあるんだよ」
突然、他愛ない会話のワンフレーズが、強烈に耳に刺さった。