第3章 特別演練
「戦闘、開始!」
式神の機械音声があがった途端、あられのような銃弾が降り注ぐ。
相手の平野と前田だ。
鶯丸は重騎兵を即座に展開し、自身が被弾するのを防ぐ。
「うおっ、いきなりやってくれんじゃん!」
被弾しつつも、口元にはやんちゃで強気な笑みを浮かべる愛染は、銃兵より展開速度が一歩遅れる投石兵を「あったれ~!」と解き放った。
合わせるように、歌仙、山姥切が同様に投石兵を展開させる。
仕返しとばかりに剛速球で向かってくる投石兵を、相手の精鋭兵、盾兵、重騎兵などの黄金の兵たちが迎え討った。
平野と前田の銃兵を剥がし、精鋭兵も片方を剥がすといったことはできたようだが、やはり大太刀に、刀装を3つ装備できる鶴丸、一期一振だ。刀剣自身は無傷である。
こちらの厚の重歩兵、愛染の投石兵はほぼ剥がれてしまっていた。
にっかり青江も片方の刀装は落ちてしまったようだ。遠戦が、終わった。次は――
「それでは」
一瞬の静けさが、荒野を吹き抜ける。
「訓練がてら、君たちの厄を落とそうか」
柔らかくもどこか冷えた石切丸の声が、白刃戦の開始を告げた。
鶯丸は反射的に腕を振り上げる。
斬撃を受け止め、目の前に現れた白い物体が、どうやら鶴丸であることに気づいた。
続けざまに放たれる切っ先を正確に防いでいく。
そうしていると、剣撃の合間に鶴丸がパッと笑みをこぼした。
「きみ、おもしろいなぁ!」
つばぜり合いの隙間から、鶯丸は小首を傾げてみせた。
鶴丸の白い首筋には、ひとすじの汗が伝っている。
口元には、どこか、ほんの少しの困惑を滲ませた笑み。
「いやなに、俺は今日3人の鶯丸と戦った。練度は全員30。連勝しているがそれが今、止まりそうだ」
はたから見れば膠着状態の刃と刃だが、鶯丸は力を込めて腕を払った。
それを受けきれなかった鶴丸は、ギリギリのところで刃を流し後退する。