第3章 特別演練
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新任の審神者向けの特別演練。
その開催の告知は、政府らしくなく急だった。
「ということで、鶯丸にも出てもらいたいと思っています。演練というのは仮想の戦闘で――」
審神者は、鶯丸がとうに知っている演練について説明し始めた。
鶯丸は「そうか」「なるほど」などと、相槌を打つ。聞いているフリも一苦労である。
ここ数日、どれだけこのフリをしてきただろう。
戦闘や遠征の流れ、刀装の作り方、付け方、各種当番などなど。
鶯丸にとっては“既知”のあれこれについて、男士たちから丁寧に説明を受けるたび、神妙な面持ちを作らなくてはならなかった。
最初の数日は、聞き流していたことがまんま表に出ていたらしく「……え、聞いてる?」と若干怒られてしまった(主に燭台切光忠に)。
そう言われないため、表情、相槌や頷き、それらのタイミングや頻度を考えて行動に移した。
今までこんなことを気にしたことはなかった。
だが、“この本丸の新顔”だと認識されている鶯丸が、そのフリをするためには、必要なことなのだ。
普段気にしなさすぎと言われれば、そうかもしれない。