第3章 特別演練
「まいったな……」
何を言ってもだめそうだ。
もう少しましな台詞が出てこないものかと思案するが、鶯丸は一向にひらめかなかった。
一日中頭の隅で考えていたが、とうとうひらめかず仕舞いで、夕御飯の時間にまでなってしまっている。
何が起きているのだろうか。
急に、何のアナウンスもなく、審神者が変わった。
昨日の今日で、本丸の構成員が変わった。
なにより、自分自身の来歴が変わった。
「いや……逆なのか」
はたと気づく。
違っているのは、不調和しているのは、俺だ。
この本丸や、審神者、刀剣たちは何もおかしくなく、あるべき姿でまわっている。だとしたら、おかしいのは俺……?
「鶯丸?」
不意に声をかけられる。
声の主は、すぐ目の前に立っていた。
随分考え込んでいたようで、全く気づかなかった。
「……小夜」
「どうかした? 体調、悪い?」
「いや、問題ない。少し考え事をしていた」
小夜の表情は乏しいものの、眼差しは気遣わしげに鶯丸に注がれていた。
鶯丸が柔らかく否定すると、彼はそう、と返してくる。
彼は鶯丸に小皿を差し出した。
「味見してくれる?」
「これは……」