第1章 主が消えた夜
「あっいました!」
「本当!?」
なにごとかと声の方を見ると、主と前田、平野、今剣がこちらへ駆け寄ってきていた。
主は興奮した面持ちで、手には皿を大事そうにのせている。
「見て見て! じゃーん!」
得意げな声とともに、たくさんの柔らかな色彩が視界いっぱいに飛び込んできた。
披露されたのは和菓子だ。それもただの和菓子ではなく、桜の花びらや、動物をかたどった和菓子である。
かたわらの三日月が目を丸くして、和菓子をしげしげと眺めていた。
「おお、これはすごいな」
「ねりきりっていうあんこの和菓子なの!」
「ぼくたちがおてつだいしたんですよ!」
今剣がえへんと胸を張る。前田と平野もどこか得意げな表情だ。
と、鶯丸の視線があるものをとらえた。
それは、鳥の形をしたねりきりだった。緑と白のあんでつくられ、でっぷりと愛らしいシルエットをしている。つぶらな瞳、ではなく、一粒の黒ゴマで表された目は、寝ているのか起きているのかわからない絶妙な具合だ。
「これは……鶯?」
「そうだよ! かわいいでしょう?」
「……そうだな、かわいらしくて食べるのがもったいない」
「ふふっ、また作るから遠慮なく食べてね!」
嬉しそうに笑う主につられて、鶯丸の口元にも自然と笑みが浮かぶ。
そんな彼を見て、主と短刀たちが顔を見合わせた。
なにかと思えば、やにわに主がぱちん! と手を叩く。