第2章 みんなのいない朝
「砂上の楼閣、だったか」
うたうような鶯丸の声が、静寂のなかで響いた。
水面に波紋をつくるような、そんな声だった。
唐突なことに、すぐには彼の言ったことが理解できない。
砂上の楼閣?
なんのことだろう。突然何を言い出している?
ハテナでいっぱいの私を知ってか知らずか、鶯丸は薄い笑みを少しだけ深くした。
その瞳はあまりに優しくて、心臓がきゅうと悲鳴を上げる。
「しかも設計図はめちゃくちゃで、パーツもでたらめにくっつけただけだ。崩壊はもう始まっていて、誰にも止められない……俺にも――」
風が一瞬ざあっ、と鳴る。
私と鶯丸の髪の毛をひどく揺らして、人工の夜空へと立ち昇る。
柔らかな髪のすきまから覗く瞳が一瞬だけ、小さく悲嘆に揺れる。
「――君にも」
「何……を……」