第2章 みんなのいない朝
一時間ほど経っただろうか。
私は諦め悪くも、広間に足を向けた。
ひそかに宴会でもしてるんじゃないか、今日の審神者の顔見た?www みたいな殴りたくなるけども愉快な宴会が開かれているんじゃないかと、そんな希望をまだ抱いていた。
が、出迎えたのは、二度目の無音と暗闇だった。
けれど、ひとつだけ違うところがあった。
「鶯丸……」
広間からの帰り際、縁側に座っている鶯丸を見つけた。
なにをするということもなくただ座り、その瞳はぼんやりと月を眺めていた。
どうやら私の呟きが聞こえたらしい。
ちらと視線だけをよこしたあと、ゆっくりと顔をこちらに向ける。
月明かりに淡く照らされた顔には、いつもの薄い笑みが浮かんでいた。
どうしようもなく見慣れたそれが、風のなか私に笑いかけてくる。
「……あ――」
言いたいことが胸の中で急激に膨張し、あやうく窒息しそうになる。
この鶯丸は“本物”だ、なんて、馬鹿げた考えが回転灯のようにくるくる回りだし、けたたましい警報音を鳴らす。
でも、どうしたらいい?
なにを言えば、訊けばいい?
みんなの様子がおかしい、なんて意味不明なことを言ったって――