第2章 みんなのいない朝
次に話しかけられたのは、夕食をしらせるものだ。
よし、コミュニケーションのチャンス! と広間に行くため意気揚々と審神者部屋のふすまを開けたら、目の前の床に食事が乗せられた盆が置いてあった。
それはもう、ぽつんとだ。
できたての湯気が立ち上る親子丼がメインディッシュの夕食はそれはもうおいしそうだったが、「え、1人で食べるの?」とリアルに声が出た。
一応、泣きそうになりながら広間に行ったが、迎えてくれたのは無音の暗闇だけだった。
男士たちは、それぞれ部屋に戻っているらしい。
しかし、居住区の方もとても静かだった。
いつもなら夕食のこの時間は、おいしい匂いに満ちた広間でわいわい食事を楽しんでいるはず、なのに。
本当に、一体なにが起きている?
私はなにをやらかした?
泣きそうになりながら親子丼をたいらげる。
からっぽになった器を下げようと廊下へ出たら、前田がすぐ近くで立っていた。
「ッ!?」
「お下げします」
夜闇の中無言で立ち尽くしている前田は、かなりのホラーだった。
どうしちゃったの私の初鍛刀男士。
前田はにこりともせず、盆を受けとると「では」と一礼してくるりと背を向けた。
シンプルなハイダメージに泣きそうになった。
いつものように前田きゅん! とか呼びかけても、全くの無表情で応対されてしまいそうな気がした。
いつもの、はにかんだような愛らしくも頼もしい笑みは、霞ほども存在していなかった。